こんにちは。
グラフィックデザイナーの津森です。
最近は自分が好きなアイドルなど、人にすすめたいほど気に入っている人や物の事を『推し』と呼称しているようです。
「推し、燃ゆ」という小説が芥川賞を受賞しヒットするほど、今の日本には浸透している言葉ですね。
そんなわけで、今日は私の推しをご紹介します。↓のミュージックビデオをご覧ください。
センチメンタルで良い歌ですね。
おそらく、歌詞の内容は恋人に振られた(振った?)人の心情を歌っていると思われます。ちなみにタイトルは「愛す」と書いて「ブス」と読みます。
尾崎世界観さんの言葉遊びが存分に楽しめる歌詞です。
切ない歌に合わせてMVは壮大なSFラブロマンスが展開しているのですが、よく聞くと全然歌詞の内容に合ってないです。
物語のキーワードになっている「チーズ」や「ネズミ」というワードは歌詞に一切出てきません。
歌詞とMVの内容が違いすぎて、間奏の間に物語の説明文をゴリゴリに押し込んでいるところがニクい。
個人的に主人公のハイティーンが「愛<金」で行動する人間味溢れる部分がツボです。
私は初めてこれを見た時、情報過多で一回観ただけでは内容理解ができませんでした。
音楽といい映像といい、センスが爆発してますね。
この歌をどう解釈したらこんな映像作品が作れるのか、発想力に脱帽です。
今作のMVを手がけたのはテレビ番組やCMを制作している「AC部」というクリエイティブチームです。
そう、今回の私の『推し』は彼らです。以前からAC部の作品が好きで新作などはチェックしています。
彼らの映像制作に対する熱量や姿勢からはいつもクリエイターとして学ぶことが多いです。
また、グラフィックデザイナーとしての視点からは映像作品内で使用している書体デザインやロゴデザインなどは、ついつい細かくチェックしてしまいます。
下記の動画などはその典型例です。配色など、目的に合わせて構成されているのがわかります。
(ちなみに実際の仕事に反映することはそんなにありません)
AC部は現在お二人で活動中なのですが(元は3人)、映像作品だけでなくこういったアナログな紙芝居でも表現されています。
私が思うAC部の魅力は、まず圧倒的に絵が上手いところです。
その上で、鑑賞者に「違和感」を持たせるためにわざとデッサンを崩したり、暑苦しく思える絵のタッチや、コントラストの強い色使いをされていると思われます。
日常を送る上で「あれ?これはおかしいな」とか「なんか違うな」という感覚は大人になるにつれ、意識しないとどんどん鈍くなっていく気がします。
常識を疑わない方が、現状で平穏に過ごせる確率が高くなるからだと思います。
AC部が制作する作品は常に独自の世界観で、観る人々にほぼ確実に「違和感」を意識させ、ユーモアを交えてハッとするような気づきを与えてくれます。
一見秩序が無いように見えて、どのポイントで観る人の意表を突くのか、新しい表現方法ができないかなど、1作品ずつかなり作りこまれていると感じます。
この活動を20年続けられている精神力を保っている点も素晴らしいです。
AC部の作品はどれも好きなのですが、たくさんありすぎるので最後に最も好きなMVのリンクを貼って終わります。
寿司(回る方)を食べに行きたくなる歌です。
寿司ネタのキャクター達が可愛い。
自分の推しを語っている時が一番幸せですね。
グラフィックデザイナー津森でした。